2013年、梅雨の合間に晴れた日のこと。外で洗濯物を干して、家に戻ろうとした時に家の横の通路を見て、「あれ?」と思いました。少し前までそこになにもなかったところに大きな石があったからです。なんでいきなり石が置いてあるんだろうと思って、見に行ったら、それはなんと!石ではなくて、生き物でした。亀でした。
これは面白い!と思って、娘たちに見せたくて、68リットル入りの大きなプラスチックの容器に入れて、帰ってくるのを待っていました。亀は野菜を食べると知っていましたので、容器の底に少し野菜を入れて、待っていました。子どもたちも面白がって見てくれたけれど、もっとびっくりしたことは、主人が仕事から帰ってきてから、この亀の種類とか、飼い方とか、いろいろとネットで真剣に調べ始めたことです。そしてわかったことは、この亀は外来種の「ミシシッピアカミミガメ」という種類で、日本の生態系に大きな脅威となっていて、放してはいけないことがわかりました。一昔前、小さくて可愛い「ミドリガメ」として、よく夜店やお祭りで販売されていた、その亀です。大きくなりますし、長生きしますので、全国の飼い主があっちこっちで捨てた結果、どんどん繁殖して在来種のカメたちの餌になるものを先に食べてしまい、環境省では「緊急対策外来種」とされています。
飼い方としては、水が必要だとか、肉食であることとか、主人が色々と調べてくれました。
逃してはいけないということが分かっても、うちとしては亀を飼うつもりはないし、どうしたらいいか、いくつも手立てを考えました。警察に行って、誰か迷い亀の届を出していないか訊きました。市役所の環境課に行って、外来種を見つけた時にどうすればいいのか、どこか預けられるところの情報があるか、訊いてみました。近くの動物園や水族館に電話をして、引き取っていただけるかどうか訊いてみました。そしてナビゲーターをしているケーブルテレビの市政番組に亀と一緒に「出演」して、誰か欲しい人がいればさしあげますとアピールしました。けれども結局、誰ももらってくれる人や、引き取ってくれる場所は見つかりませんでした。
ミシシッピアカミミガメなので、雄か雌かもわかりませんが、名前を「ミッシー」と付けました。(ミッシーは英語で、Missの愛称として、若い女の人を呼ぶ時に使うことばです。)
英語の生徒で、当時小学校2年生だけど恐ろしいぐらい動物に詳しい子がいて、自分で飼っていないのに亀の飼い方の本を持っていたので、それを貸してもらいました。そうしたら、この亀は冬眠をするということがわかって、また、冬眠のさせ方もわかりました。水苔と一緒に、20リットルの水に入れると、水苔の下で仮死状態になり、息を吸うために無意識に時々上の方に浮き上がってくるという、とても面白い冬眠方法です。冬眠を「させる」という言い方は今でも違和感がありますが、しないといけないことなので、水苔を買ってやってみることにしました。
ミシシッピアカミミガメは冬眠に入る約一ヶ月ぐらい前から餌を食べなくなります。腸の中が完全にきれいになっていないと冬眠に失敗することがあるそうです。それよりもびっくりしたのは、食べなくなると同じぐらいの時期から、甲羅が少しずつ剥がれてくるようになったことです。亀が脱皮することをはじめて知りました。
本当に、我が家にいろんな動物がやってきましたが、新しい発見、新しい知識が多く得られて、楽しい限りです。
最初は何とかして手放したかった亀でしたが、「ちゃんと冬眠から目覚めますように!」と祈りました。そして目覚めてから色々と世話をしているうちに、とても可愛くなってきました。小さいことに楽しみを覚えるようになりました:お水を替えようとして、持ち上げる時に、怒ったように口を開けて「シャー」と音を発すること。甲羅をブラシで汚れを取ろうとする時に左右に動いたりして嫌がること。もちろん亀なりにですが、逃げようとする時に意外と早く歩けること。ダンゴムシが大好きだけど、カマキリもミミズも食べてくれること。カメムシだけは食べないという、賢い動物だなとわかった時のこと。何よりもカナブンが大好きですぐ食いつくこと。ミッシーの亀なりの性格が少しわかるようになってきたら、本当に可愛くなってきました・・・。
そして何よりも、餌をあげる時に私の声に反応するようになったことや、とにかく目がきれいだということ。最初の冬眠から起きてきた時は、あっという間に我が家の(そして特に私の)本格的な「ペット」になりました。
ある日突然現れて、長年の楽しみを与えてくれて本当にありがとうね、ミッシー!
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