[ 必ずこのポスト:TCKのポジティブ!とセットで読むようにお願いします。 ]
大学時代の話です。数十人しかもらわない、名誉な返済不要の奨学金の受賞者のための歓談会で、宣教師の子どもとしてガーナで育った女性と話をしていました。子どもの頃、5年間ドイツに住んだことがあるというと、
「あっ、じゃあ、あなたもサードカルチャーキッズなのね。」と言われました。
私:「?!?」
新しい友だち:「親の国でない国で育った子どもが、その国でもない、また、自分の親の国でもない文化を身につけたり、その中で育つので、第3の文化、サードカルチャーの文化の子どもになるから、こういう呼び方をするんだよ。」
初耳だったけどかなり納得。けれども、とても長い間、この会話以外、あまりサードカルチャーについて考えたことがありませんでした。
17年間早送り・・・
日本の片田舎に住みながら、子どもが東京にあるインターナショナルスクールとの関わりが与えられ、その図書室から
Third Culture Kids – The experience of growing up among worlds – [初版の題名]
という本を借りました。この本を読んで、本当に目からウロコでした。著者たちのTCKの定義とは、「第三文化の子ども(TCK)とは発達段階のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごした子どものことである。TCKはあらゆる文化と関係を結ぶが、どの文化も完全に自分のものではない。TCKの人生経験は彼らがかかわったそれぞれの文化から取り入れた要素で成り立っているが、彼らが帰属意識を覚えるのは同じような体験を持つ人々とのかかわりにおいてである。」
サードカルチャーキッズの中には、自分自身のアイデンティティーがしっかりと据えられないうちに、多くの文化の間を行き来するので、それぞれの文化の価値観ややり方が身につき、「自分」のアイデンティティーがはっきりしないまま大人になっていく子どもたちがいます。(これは、私自身の簡単過ぎる要約と肝心に思った箇所です。もっと詳細な要約はChild Research Networkのブログにあります。)
大人になってからこのように育てられた人々をアダルトサードカルチャーキッズ(ATCK)と言います。そしてこのATCKはとても有利な点を本当に多く持ちながらも、必然的に様々な課題を抱えながら生活していることも事実です。子どもの時の経験が、大人になっても、いいところもよくないところも、そのまま個人の一部になっていて、Adult Third Culture Kidsの中には今もなお、そのアイデンティティーを暗中模索しながら生活している人が少なくないことを知りました。
私は、父親が米国空軍の将校だった家庭で育ち、10才から15才まで、ドイツの「米軍基地」とも言えないぐらい小さなNATOの基地がある町に住んでいました。アメリカ人のための施設やリソースがあまりにも乏しかったので、私はドイツ語を学び、ドイツのお店で買い物したり、ドイツのものを楽しんだりするのが大好きでした。
Rathaus (City Hall), Kalkar, Germany
(© Bildarchiv Monheim GmbH / Florian Monheim)
そして、自分の性格のかなり多くの特徴が、サードカルチャーキッズとして育ったことから来ていることがわかりました。
例えば、別れに関してかなり冷たい態度でいられること、反抗期を遅れて迎えたこと(私の最初の本格的な反抗期は、22–23才の時でした)、集めたものをなかなか捨てられないこと、などです。
しかも、面白いことに、「軍」という組織は特殊な文化であるがゆえに、海外との密接な関係がない軍人の子どもでも、外国で育ったサードカルチャーキッズと同じ性質があらわれます。
この本を知って、面白かったですが、この時は「面白い本を読んだ」で終わってしまいました。
さらに7年早送り・・・
前回この本を読んだ時は、サードカルチャーキッズの「表面的」な共通点に目が行き、共感をすることができました。けれども、今回は、個人的な問題が発端で、このサードカルチャーの経験が、深いレベル、「内面的」に私をどのように影響したのかを、知りたいと思うようになり、再びこの本を手にしました。サードカルチャーキッズの内面的な代表的な課題として、例えば、適切に悲しむことができない、常に居場所がないように感じる、自分の人生を他人任せにする、長期的なコミットメントができない、・・・などがあります。
今回は鉛筆を片手に、線を引きまくりながら、そして肝心な箇所を別なノートに写しながら、自分を泣かせたフレーズ、苦い記憶を思い出させた箇所など、本当に注意しながら読みました。
そこで学んだこと、気付かされたこと自体は、あまりにもパーソナルでプライベートで、今はとてもブログでシェアできるようなものではありませんが、そうこうしているうちにとても不思議なことがありました。
ドイツにいる時に1年間だけインターナショナルスクールに通っていましたが、その時に一番仲良くしていた日本人からFacebook (このブログと同時に始めたので、まだそんなに経っていない)の友だちリクエストが来ました!20年ぐらい音信不通になっていたけれども、名字が変わっていたものの、顔写真を見たらすぐにわかって、連絡を再び取れるようになったことが本当に嬉しかったです。
そして!なんと!10年に一度の世界各地で行われるインターナショナルスクールのリユニオン(同窓会)が、その2ヶ月後に東京で持たれるようになっている…ということを聞いて、とても驚きました。私は1年間しかそのインターナショナルスクールにいませんでしたが、その1年間は私にとってかけがえのない、貴重な1年間でした。
大人になってからサードカルチャーキッズのアイデンティティーについて悩んでいる、ちょうどこの時期に再び同じ境遇にいた人たちと会えるとは…。本当に不思議な神様の働きを感じました。私自身のこの課題との取り組みはまだ終わっていませんが、子ども時代を海外・軍隊の中で過ごしたことによってどんな影響を受けているかがある程度わかって、本当によかったと思っています。
子どもを海外で育てた・育てている人(特に現地校に通わせている場合)、自分が海外で育った人、また、そのような人と関わりのある方々にとって、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
日本語版もあります:
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